2019年8月23日(金)
高住協会長のつぶやき(2019年9月号)・・・人生100年時代を迎えて(その2)
前回では、金融庁の「老後2,000万円足りない」という報告書には、金融庁としては「高齢者にもっと投資をしてほしい」という狙いがあり、また、国として「70歳まで働いてほしい」というメッセージが込められていると指摘しました。
まず、「高齢者にもっと投資をしてほしい」という背景には、高齢者が抱えこんでいる預金を市場に回すことで、産業をもっと活発にしたいという狙いがあります。平成29年の高齢社会白書には「貯蓄現在高について、世帯主の年齢が60歳以上の世帯と全世帯を比較すると、前者は1,592万円と、後者の1,054万円の約1.5倍となっている。世帯主の年齢が60歳以上の世帯では、4,000万円以上の貯蓄を有する世帯が18.2%であり、全世帯(12.1%)と比べて高い水準となっている」と書かれています。つまりこれらの貯蓄をもっと有効に使ってはどうかというメッセージが込められているのです。それに、この低金利です。投資することで、定期預金ではほぼ利子がつかない状況を少しでも挽回したいというのは誰もが思うことでしょう。
ただ、金融庁は銀行を管理している官庁ですから、庶民に投資を促して銀行を少しでも元気になるようにさせたいとの思いも透けて見えます。経済評論家の荻原博子さんはこう言っています。「特に狙われているのが高齢者です。日本の個人金融資産約1700兆円のうち、60歳以上の高齢者の保有割合は6割を占めます。退職金も含めて潤沢な資産があり、なおかつ投資に疎い高齢者がターゲットになっているのです。今、収益悪化に苦しむ金融機関が、手数料を稼げる投資商品を血眼になって売っています。そんなところに素人が手を出すのは、カモがネギを背負って鍋に飛び込んでいくようなものです」。
私は金融面ではまさに素人ですので、どちらが正解なのかはよくわかりません(というか答えは未来にしかない)。まあ、前提として投資するほどの資産もない私ですので、「投資しないのではなくできない」という答えは決まっていますが‥‥。
高齢者が貯めこむのは、やはり老後の不安があるからでしょう。難しい病気になったら医療費も嵩むでしょうし、有料ホームやサ高住などに入居するとしたらその費用も心配です。だからある程度貯めておくこと自体は自己防衛ともいえ、まったく悪いことではありません。
しかし、生きているうちに自分のために使うということも大事です。リスクがある金融への投資よりも、自分への投資の方が良いのではないかと思います。たとえば、「将来、病気になったら費用が大変だから旅行にはいかないようにしよう」というのではなく、「いつ死ぬかわからないから、行けるうちに行ってみたいところに行こう」という方が、楽しい人生を送れると思います。無責任な言い方かもしれませんが、いざとなったらなんとかなると思います。自分へ投資して自分を磨くことは、将来の不安への対処の助けとなるでしょう。
「70歳まで働いてほしい」ということについてはまた次回に。