2019年7月23日(火)
高住協会長のつぶやき(2019年8月号)・・・人生100年時代を迎えて(その1)
私が北海道高住協と並行して関わるシニア団体が2001年に発足したときのスローガンは、「人生に定年はありません!豊かなシニアライフを共に歩みましょう」というものでした。また、「人生80年代、定年後もまだまだ20年以上人生が続くのです。60歳からの人生を活き活きと活動しようではありませんか」と訴えていました。
しかし、わずか20年のあいだに「人生100年時代」といわれるようになりました。定年も65歳に延長され、今、国は「できれば70歳までは働いてほしい」と言っています。
その背中を押すような報告書が、今、巷で騒がれている金融庁の「金融審議会市場ワーキング・グループ報告書」で、簡単にいうと「95歳まで生きると年金収入だけでは2000万円不足しますよ」という内容です。野党がそれを受け「100年安心と言っていたじゃないか!」と攻撃し、与党が「いや報告書はいたずらに不安を煽っている」として麻生大臣が報告書の受け取りを拒否した(ないものにした)というお粗末な顛末があり、参議院選挙の争点にもなっていたところです。その報告書(「高齢社会における資産形成・管理」・令和元年6月3日)はインターネットでも公開されていますので、私も読んでみましたが、各分野の専門家が分析したまっとうな内容と感じました。
内容をダイジェストすると、「夫65歳、妻60歳以上の夫婦のみ無職世帯(モデル世帯)の支出は現役時代に比べ2~3割減少する(支出:26万円=食費6.5万円、住まい5万円、交通・通信3万円、教育・娯楽など2.5万円他)。しかし、収入も年金給付に移行するなどで減少する(収入:21万円・年金収入のみ)。収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約1,300 万円、30 年で約2,000 万円の資産の取崩しが必要になる。また、支出については、特別な支出(例えば老人ホームなどの介護費用や住宅リフォーム費用など)を含んでいないことに留意が必要である。だから資産活用が求められる」というものです。
まあ、専門家がいろいろな統計分析を駆使しての報告書ですからそれなりに説得力はありますが(厚労省の統計不正があったので、この報告書も怪しいかもというのはさておいて)、私たちの生活実感でもよほどの年金を貰っていない限り「そうだよなあ」と思うところではないでしょうか。ただ、争点となった背景として、長寿は喜ばしいことという社会的な合意がある中で、あえて、「長生きすると大変だよ」と指摘されたように感じられたことがあったのではないでしょうか。
実は、この報告書が出た背景には、金融庁としては「高齢者にもっと投資をしてほしい」という狙いがありますし、また、国として「70歳まで働いてほしい」というメッセージが込められてように思われます。そのあたりの私なりの見解は次に譲ります。