10月26日に行われたケアマネ試験の感想です。
今年度は、介護支援分野は昨年度よりは若干難易度が上がったような印象を受ける。医療分野はサービス内容で難易度がちょっと上がり、逆に福祉分野はサービス内容がちょっと易しくなって難易度が少し下がったと思う。まあ何点取っていようが合格ラインの線をどこに引くかということが問題であるのだが。今年も合格率は20%は切るのではないか。
介護支援分野では、予想通り、介護保険の背景、介護保険導入の経過、実施状況は出題されなかった。これは基本テキストの数値が陳腐になったことや、ケアマネにはかつての経過よりも今の制度をもっと覚えてほしいということだろう。まともな傾向である。ただし、「基準該当サービス」とか「特例サービス」など、また福祉分野では「生活保護受給者である第2号被保険者への介護扶助」などレアなサービス内容が出題され、ここまで覚えないと駄目なのかなあと感じた。
以下、介護支援分野の問題の感想を述べる。
はじめて変わったのが、設問の順番。介護支援分野は、かつては基本テキスト1巻の記載順に出ていたのだが、今回は市町村事業計画、介護サービス情報の公表、財政安定化基金、審査請求、財政と、介護支援分野では基本テキスト後半の部分が初っぱなから出てきた。これは新しい傾向。ただ順番が入れ替わっただけの話だが。
問題1は、介護保険事業計画。毎年必ず1問出ているところで、易問といえる。問題2の介護サービス情報の公表も、このところ毎年出てきている。当初は失敗した施策だったが、失敗を取り戻すためにはその意義を試験でも訴えなければならないということはよくわかるから、受験対策講座では「今年も出題される」と言ってきたが、やはり出た。そしてちょっと迷う問題となっている。「運営情報に職員研修の実施状況が含まれる(〇)」というのは基本テキストにはない細かい選択肢だが「サービスの質の確保のために講じている措置」と理解できるだろうし、×の選択肢がわかりやすい。問題3の財政安定化基金、問題4の審査請求、問題5の介護保険財政も基本的な問いで難しくはない。問題5の選択肢2「共済年金は特別徴収の対象とならない(×)」には思わず失笑。問題6の地域密着型介護予防サービスも×の選択肢がわかりやすい。問題7の指定居宅サービスの基準も×の選択肢がわかりやすく易問。
問題8の基準該当サービスの出題は意外だった。基準該当サービスには施設サービスは認められていないので「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は、基準該当サービスとして認められる(×)」はわかった人が多いと思うが、「サービスに関する基準は、厚生労働省令では定められていない(×)」は迷った人が多かったのではないだろうか。「基準該当」とは厚生労働省が定めている指定要件(運営基準等を満たす)を完全には満たしていないが保険者が一定の水準を満たしていると認めた場合に「基準該当サービス」とするものである。
問題9の低所得者対策は、やや細かいが社会福祉法人による利用者負担の軽減制度をがっちり勉強していれば正答できただろう。社会福祉法人の社会貢献が話題になっているだけに、受験対策講座でも強調しておいたが、実際、もっと活用されても良い制度だと思う。問題10では特例介護給付費が出題された。これが該当となるのはレアなケースであり、難問というより珍問。特例サービス費の要件は、①認定申請前にサービスを受けた場合、②基準該当サービスを受けた場合、③離島などで相当サービスを受けた場合、④被保険者証を提示しないでサービスを受けた場合などである。介護給付の種類として位置づけられているのは、選択肢3の「特例地域密着型介護サービス費」と選択肢5の「特例居宅介護サービス計画費」であるので、答えは3と5になる。重箱の隅をつつくような嫌みな問題ではある。
問題11の保険給付は細かい知識を聞いているが、〇の選択肢がわかりやすい。問題12の区分支給限度基準額が適用されるサービスは基本中の基本の問題。これを間違ってはいけない。
問題13~16は要介護認定が4題出て、例年より1問増えた。問題13は例年のレベルの問題である。全ての選択肢が過去問の変形である。やはり過去問のチェックが大事。問題14は認定調査票に特化した珍しい問題。基本テキスト第1巻124頁の表の範囲だけではなくより細かいところまで聞いている。「家族の介護力」は認定調査では考慮されないことがわかっていれば正答にたどり着く。問題15も認定基準時間の算定という珍しい問題。08年と06年に出題されてから久々ではないだろうか。「1分間タイムスタディ・データに基づく」ことと、「実際の家庭での介護時間ではない」ことがわかっていれば解けるが、見過ごしやすい箇所かもしれない。問題16は例年通りの普通の問題で過去問の変形である。
問題17の介護支援専門員の業務は、×印がはっきりしすぎて一番の易問。問題18のケアマネジメントも同様に易問。でも選択肢4の「生活保護受給者のケアプラン作成は、福祉事務所の現業員が担当する(×)」というのは魅力的な提案ではなかろうか。問題19の介護予防サービス計画の作成は、ちょっと迷った方もおられたのではないか。選択肢2「問題志向型で作成しなければならない(×)」の正解は、「目標志向型」である。
問題20の介護予防支援のためのサービス担当者会議は、やや難問。選択肢1「介護予防福祉用具貸与を利用する場合は、定期的に開催する(×)」は「必要に応じて随時開催」となる。選択肢3「会議の記録は、その開催日から2年間保存しなければならない(×)」はなかなかうまい引っかけ問題。正解は「介護予防支援が完結した日から2年間」である。
問題21の施設サービス計画の課題分析は×の選択肢がわかりやすく易問。問題22の介護支援専門員の業務も×の選択肢がわかりやすく易問であるが、×の選択肢それぞれがケアマネジャーの手抜きを勧めていて、こんな風に思われているのかなあと……。
問題23の介護保険施設は、老健を開設できる事業者を問う選択肢が2つあるなど過去問にあまり見ない問題。ただ×の選択肢がわかりやすい。問題24・25は事例問題であるが、いつも通りの易問。利用者目線から考えれば正解にたどり着く。上から目線の「指示した」などはいつもながらNGである。問題24のヘルパーとの会話が楽しみで回数減に応じない事例は、ケアマネの悩みをうまく表現している好事例と感じた。
保健医療分野は、医療に関する問題は基本的な問題が多く、正答かどうか迷う選択肢があっても×の選択肢がはっきりしている傾向が強く、余り難しさは感じられなかった。ただし介護サービスに関しては、問題36(訪問看護)、38(介護保険施設)、39(老人保健施設)、40(短期入所療養介護)は、いずれも細かい加算を聞いてきており難しい。
また、医療分野でも問題37で虐待が出題された。虐待は医療・福祉に限らない問題である。総体的にサービス内容の問題が難しく、若干合格点は下がるかもしれない。
福祉分野は、サービス内容が保健医療分野と違いあまりこまかく出題されなかった。難易度は昨年よりは易しくなっている。ソーシャルワーク論3題はいつもながら易問。ソーシャルワーク論で1問、虐待疑いの事例問題が出題されたが、これも易問であった。
各サービス内容では、難しいのは問題56(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護)くらいではないか。選択肢1「施設形態は、単独小規模の介護老人福祉施設と、同一法人による本体施設のあるサテライト型居住施設の2つである(×)」は、他に通所介護事業所や小規模多機能型居宅介護事業所等と併設された小規模の介護老人福祉施設、本体施設とサテライト型居住施設と併設事業所を組み合わせたものが考えられる。
問題58の生活保護は難しい。選択肢1「介護保険の第2号被保険者は、特定疾病による要介護又は要支援の状態にあっても、介護扶助の対象とはならない(×)」は、こういうレアなケースをよく出すなあとため息。医療保険に加入している生活保護受給者はいるがかなり少ない。もちろん、その方は介護扶助を受けることができる。
介護支援専門員の試験は、ほぼ基本テキスト(法令含む)からの出題に限られているので、だんだん重箱の隅をつつくような問題が多くなって来るのはやむを得ないのかもしれない。
めでたく合格し、実務研修を受けられる方は、今回の受験勉強に注ぎ込んだエネルギーを、今度は、現場のケアマネジメントに注ぎ込まれるよう期待したいものです。