2013年度介護支援専門員受験対策(9) 9月2日
いよいよ1ヶ月と少しになってきましたね。
今回は、保険給付と低所得者対策です。
【現物給付】
1)償還払い
・サービスを受けた被保険者が、サービス提供事業者にその費用をいったん全額払い、後に領収証等の提出により保険者からその費用の全部または一部の払い戻し(償還)を受ける方式。住宅改修や福祉用具購入などがそうである。
2)法定代理受領方式による保険給付の現物給付化
・介護保険では、利用者の負担を考え、多くのサービスに法定代理受領(現物給付)を取り入れている。法定代理受領方式とは、保険者がサービスを受けた被保険者に代わってサービス提供者に費用を支払うことで、被保険者に保険給付を行ったとすることである。
<現物給付できるサービス>
① 居宅介護サービス費、②地域密着型介護サービス費、③居宅介護サービス計画費、④施設介護サービス費、⑤特定入所者介護サービス費
<現物給付できるサービスであっても償還払いとなる場合>
①認定申請前にサービスを受けたとき、②介護サービス計画を作成せずにサービスを利用したとき、③サービスを受ける際に被保険者証を提示できないとき、④保険料滞納で支払方法変更の措置を受けている場合
<償還払いのサービス>
① 福祉用具購入費、②住宅改修費、③高額介護サービス費、④特例○○サービス費の全て、⑤基準該当サービス費
【審査・支払】
・ 保険の給付は、サービス事業者が保険者である市町村へ請求し、市町村から支払われるものであるが、現物給付化された場合は、審査及び支払いの事務を国保連に委託することができ、実際には、国保連へ請求し、国保連から支払われることとなっている。
・国保連への請求は、原則として伝送または磁気媒体により提出(一定の事業所は帳票による提出も可)。国保連への請求は翌月10日まで。その翌月(サービス提供月の翌々月)に支払いを受ける。
・公費負担医療等の公費分や、生活保護の介護扶助についても同一の請求書となる。
・給付費の審査は、国保連が介護給付費審査委員会を設置して行う。
・給付費審査委員会……同数の①介護サービス担当者を代表する委員、②市町村を代表する委員、③公益を代表する委員で構成(任期2年)。
【利用者負担】
1)利用者負担
・利用者負担は、サービス費用の1割の定率である。ただし、居宅介護支援費・介護予防支援費は全額保険給付である。
・市町村は、1割の定率負担を減免できる。①災害で損害、②生計維持者の死亡や入院、③生計維持者の失業や倒産等、④生計維持者の不作や不漁等の場合。
2)高額介護サービス費・高額介護予防サービス費
・世帯単位で1割負担が高額となる場合、高額介護サービス費・高額介護予防サービス費を支給する。世帯の所得区分ごとに利用者負担の上限額を定める(課税世帯の場合、月37,200円以上が対象)。高額サービス費の対象は、居宅サービス・地域密着サービス(それぞれ予防を含む)・施設サービスであり、福祉用具購入・住宅改修は含まれない。支給を受けるには、領収証などを添付して市町村に申請する必要がある。
3)高額医療合算介護サービス費・高額医療合算介護予防サービス費
・08(H20)年4月より、高額医療・高額介護合算制度が施行された。医療保険各制度の世帯内に要介護者がいる場合であって、1年間の医療保険と介護保険の定率自己負担の合計額(世帯単位で計算)が所得区分に応じた負担限度額を超えるとき、超える額を償還払いで支給する制度(支給額は医療保険と介護保険の保険者で分担)。それぞれ高額介護サービス費・高額療養費が支給される場合はそれを除いた額の合計額
4)施設等における食費・居住費の負担
・施設サービスの食費・居住費、短期入所サービスの食費・滞在費、通所サービスの食費は全額利用者負担。食費の場合は食材料費+調理コスト相当額、居住費(滞在費)の場合は、個室は室料(減価償却費)+光熱水費相当額、多床室は光熱水費相当額を負担
・その他の負担として、理美容代や教養娯楽費など日常生活でも通常必要となる費用(日常生活費)は全額利用者負担となる。
・特別なサービスについても自己負担。→遠隔地の事業者からサービスを受けた場合の交通費や送迎費、介護保険施設での特別な室料や特別な食費など。
・通所サービスの食費・おむつ代は全額自己負担である。特定施設・グループホームともおむつ代は自己負担である。施設入所と短期入所の場合「おむつ代」は給付対象となる。
2)低所得者対策
①高額介護サービス費
利用者1割負担は、高額介護サービス費が適用されるので所得段階で違う負担となっている。第1段階(生保)・第2段階(住民税世帯非課税で所得と年金の合計額が年額80万円以下)は自己負担15000円が上限。第3段階(住民税世帯非課税であるが所得と年金の合計額が年額80万円以上)は24600円が上限。第4段階(市町村民税本人非課税、本人課税等)は37200円が上限。なお、境界層該当者(より負担の低い基準を適用すれば生活保護が必要でなくなる人)の人は、より低い段階と見なすことができる。
②特定入所者介護サービス費等の支給(食費・居住費の補足給付)
・支給対象者=生活保護受給者または市町村民税世帯非課税者であり、利用者負担段階の第1段階~第3段階に該当する者。
・支給対象サービス=施設サービス(地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を含む)と短期入所サービスの全て。
・支給額=食費の基準費用額(1日1380円)と居住費の基準費用額(ユニット型個室・ユニット型準個室・従来型個室・多床室によって別々の基準額が定められている)から、利用者の負担限度額を差し引いた額が、補足分として給付される。例えば、第1段階の食費の自己負担限度額=300円で、標準負担額が1380円だから、差し引き1080円が補足給付される仕組み。
・負担限度額認定証の交付→毎年、市町村は利用者の申請を基に、負担限度額認定証を交付する。対象は、利用者負担第1・第2・第3段階の者である。
11年度問題 3 保険給付の内容について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 法人格のない住民参加型非営利組織の事業者の場合も、基準該当居宅サービスとして特例居宅介護サービス費の支給対象となり得る。
2 被保険者が、緊急その他やむを得ない理由により、被保険者証を提示しないでサービスを受けても、特例居宅介護サービス費の支給対象となり得る。
3 介護保険施設入所者の理美容代は、保険給付の対象となる。
4 特定施設入居者生活介護サービスのおむつ代は、保険給付の対象となる。
5 施設介護サービス費に栄養管理は含まれない。
08年度問題7 利用者負担について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 住宅改修費の支給に係る利用者負担は、高額介護サービス費の支給の対象とならない。
2 施設介護サービス費には、居住に要する費用が含まれる。
3 市町村民税世帯非課税者は、特定入所者介護サービス費の支給対象である。
4 居宅介護支援に係る利用者負担についても、低所得者の減免がある。
5 介護保険施設であっても、利用者負担を受領するときは、領収書を交付する。
07年度問題3 介護保険制度の保険給付について正しいものはどれか。2つ選べ。
1 利用者負担は、所得に応じて負担額が決まる応能負担が原則である。
2 施設サービスでは、おむつ代は利用者負担とされている。
3 高額介護サービス費は負担限度額を超えた場合に給付されるもので当該利用者については負担軽減が図られている。
4 特定入所者介護サービス費の支給対象は、施設サービスのほか、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護である。
5 利用者負担は、原則として、居宅サービスの場合は定率1割、施設サービスの場合は定額である。
11問題3:1・2 / 08問題7:1・3・5 / 07問題3:3・4
③その他の低所得者対策
ⅰ)社会福祉法人等による利用者負担の軽減制度
・受けられるサービスは、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型サービスなど、いわゆる「福祉系」のサービス(介護予防含む)
・軽減される利用者負担は、介護費負担(いわゆる1割負担)、食費、居住費(滞在費)、宿泊費
・受給の条件は、次の①~⑦の全ての要件を満たす人で収入等を総合的に考慮して生計が困難であると市町村が認定した人
①市町村民税世帯非課税である、②年間収入が、単身世帯で150万円、世帯員が1人増えるごとに50万円を加算した額以下、③預貯金等の額が、単身世帯で350万円、世帯員が1人増えるごとに100万円を加算した額以下、④世帯が所有する資産が、全て日常生活のために必要な資産、⑤負担能力のある親族等に扶養されていない、⑥介護保険料を滞納していない、⑦利用者負担割合が5%以下の旧措置入所者でない。
・軽減の程度は、利用者負担の4分の1(老齢福祉年金受給者は1/2)が原則で、市町村が利用者の状況を総合的に考慮して個別に決定し、確認証に記載する
※なお、2011年度から生活保護受給者も軽減制度の対象となった。
ⅱ)境界層該当者への負担軽減
利用者負担をした場合に生活保護が必要となる者の負担軽減→高額介護サービス費・特定入所者介護サービス費などに適用。
ⅲ)市町村民税課税層(第4段階)における食費・居住費の特例減額措置
第4段階の高齢者夫婦の一方が施設入所して食費と居住費を負担した結果、残された配偶者の生計が困難になる場合は、第3段階とみなして特定入所者介護サービス費等を支給する。
ⅳ)旧措置入所者についての特例措置
・制度施行日に措置により特別養護老人ホームに入所していた者で介護保険法による要介護認定を受けた者(要介護旧措置入所者)については、施行日から10年間に限り、介護保険の利用者負担が従前の費用徴収額を上回らないように、定率負担や食費の軽減措置を講じられている。
※旧措置者については介護報酬も若干違う。
【保険給付の制限】
①監獄等に拘禁されている者については給付しない。
②被保険者の故意の犯罪や重大な過失、または正当な理由なしにサービスの利用等に関する指示に従わないことにより、要介護状態に陥ったり、その状態の程度を増進(悪化)させたりした場合には、市町村は給付の全部または一部を行わないことができる。
③介護給付等を受ける者が、正当な理由なしに、介護保険法の規定に基づく文書の提出を拒んだり、市町村職員による質問等に応じなかった場合は、市町村は給付の全部または一部を行わないことができる。
10年度問題 7 介護保険の利用者負担に係る低所得者対策について正しいものはどれか。3つ選べ。
1 高額介護サービス費は、所得段階別に負担上限額が設定されており、低所得者の負担軽減が図られている。
2 市町村民税本人非課税者は、特定入所者介護サービス費の支給対象とならない。
3 短期入所療養介護は、特定入所者介護サービス費の対象となる。
4 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度の軽減対象は、介護費の1割分の利用者負担並びに食費、居住費(滞在費)及び宿泊費である。
5 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度の対象となるサービスには、訪問看護も含まれる。
10問題7:1・3・4