長崎県でのグループホームで火災が起き、4人の入居者が亡くなるという悲しい事件が起きた。「またか」という思いと、「サービス付き高齢者向け住宅でも起こりうるのではないか」という考えが頭をよぎった。
サービス付き高齢者向け住宅は、介護保険法では規定がないので「居宅」扱い、高齢者住まい法では「住宅」としか規定されていないが、消防法では、①一般住宅、②共同住宅(寄宿舎等)、③福祉施設(消防法による分類で社会福祉法や介護保険法の分類とは一致しない:注1)、のどれかの分類で届け出ることとなる。①、②にはスプリンクラーの設置や避難訓練、防火管理者の配置等についての規定がないが、③は275㎡以上でのスプリンクラーの設置などの規定がある。
届け出を受けて消防署が査察(実地検分)をして、届け出通りかどうか判断することになっているが、査察は毎年あり、その都度、消防署が判断することになっている。消防署は「実態主義」で、その時点での状況により判断するので、例えばはじめの届け出時点では元気な方が多いので「共同住宅」とみられても、2年後には要介護の方も結構いてとっさに逃げることの出来ない方も多いと判断された場合、福祉施設と見られ、それに見合った体制整備を指導されることになる。
サービス付き高齢者向け住宅の場合、実態からすると福祉施設と判断されることが多いのではないか。また、経年による入居者の高齢化や重度化の進行も考えると、それに見合った体制をはじめから整えておきたいものだ。国は、火災を起こした長崎県のグループホームが270㎡でスプリンクラー設置対象外だったことから、小規模施設も義務化することを検討することとしている。これから高齢者向け住宅を建てようとするときは、275㎡未満であってもスプリンクラーを設置することを心がけてほしいし、既存住宅にあっても、改修助成金などの活用を検討していただきたい。
一方、そのような防災設備だけで、介護度の高い入居者を夜間の少ない人員で救えるのかという疑問もある。これは、やはり地域との連携を考えざるを得ないのではないだろうか?
ちなみに、サービス付き高齢者向け住宅の事故等についての行政への報告は、「高齢者住まい法第24条」では、事業者等に対し報告を求めることができるとはされているが、事故等が発生した場合に事業者側から報告しなければならない義務を定められてはいない。
そこで、厚生労働省は、平成24年3月に茨城県で起きた有料老人ホームにおける孤立死事件(亡くなってから相当の期間が経過してから発見された)を受け、別添「有料老人ホーム等における事故の情報提供のお願いについて」という事務連絡を、都道府県・指定都市・中核市向けに発出している。
この事務連絡は、国から都道府県等に対して情報提供を求める内容のものであることなどから、都道府県では、事故の報告依頼をはじめ当該事務連絡についてもサービス付き高齢者向け住宅事業者には通知していないところもある。
しかしながら、当該事務連絡の趣旨や、サービス付き高齢者向け住宅の大部分が有料老人ホームであることを鑑み、当該事務連絡にある
・入居者の死亡事故(死亡後に相当期間の放置がなされた場合を含む)
・入居者に対する虐待
・サービス付き高齢者向け住宅事業者による入居者の財産侵害(職員による窃盗等)
・サービス付き高齢者向け住宅における火災事故
・地震等の自然災害によるサービス付き高齢者向け住宅の滅失・損傷
など、入居者の生命・財産等が脅かされる事案については、所管行政庁(北海道の場合は、札幌市・函館市・旭川市・その他は北海道)に報告すべきである。
また、所管行政庁がない高齢者向け住宅の場合も、同様に、その事業所が所在している市町村へ届けるべき、と心がけてほしい。
資料:「有料老人ホーム等における事故の情報提供のお願いについて」
事務連絡:平成24年5月25日発
厚生労働省老健局高齢者支援課・国土交通省住宅局安心居住推進課
注1:消防法に定められた福祉施設等(消防法施行令別表第1)
イ 病院、診療所又は助産所
ロ 老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものに限る。)、介護老人保健施設、救護施設、乳児院、障害児入所施設、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。)、老人福祉法(昭和38年法律第133号)第5条の2第4項若しくは第6項に規定する老人短期入所事業若しくは認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者自立支援法(平成17年法律第123号)第5条第8項若しくは第10項に規定する短期入所若しくは共同生活介護を行う施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。ハにおいて「短期入所等施設」という。)
ハ 老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものを除く。)、更生施設、助産施設、保育所、児童養護施設、児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、身体障害者福祉センター、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム、老人福祉法第5条の2第3項若しくは第5項に規定する老人デイサービス事業若しくは小規模多機能型居宅介護事業を行う施設、児童福祉法(昭和22年法律第164号)第6条の2第2項若しくは第4項に規定する児童発達支援若しくは放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)又は障害者自立支援法第5条第7項、第8項、第10項若しくは第13項から第16項までに規定する生活介護、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援若しくは共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)
ニ 幼稚園又は特別支援学校