サービス付き高齢者向け住宅がどんどん増えている北海道である。1月11日現在の登録件数は182件6663戸と、大阪府の209件8763戸に次いで多い。高齢者人口(65歳以上)は当然大阪の方が多いので、戸数/高齢者人口で見ると北海道の方が高い。多分北海道が一番だろうと思いながら、都道府県の戸数/高齢者人口を探ってみると、意外や三重県、広島県などの方が高かった。もっとも北海道は、サービス付き高齢者向け住宅の登録ができない、あるいは登録しない高齢者向け住宅、下宿などがかなり多いので、いわゆる「高齢者向け住宅」というくくりではやはりかなり多い方ではないかと感じているが、この辺りの実情はどうなのだろう。これは統計的には把握できないところである。
先日、道新の経済欄に「売上高指数16年ぶりプラス」という記事があってサブタイトルが「高齢者住宅建設けん引」となっている。記事をちょっと引用すると「国土交通省によると、昨年4~11月に道内で着工した貸家は1万4612戸と前年同期23.7%増えた。建設業界関係者によると、増加分の大半は高齢者向け賃貸住宅だという。これにより建設資材や設備の生産、流通に関わる企業の業況が上向き、業種別の売り上げDI(全産業の売上高の増減を示す指数)は、木材・木製品製造業がプラス5、鉄鋼・金属・機械製造業はプラス16で、ともに同10ポイント改善した。建設業はマイナス4だったが、同9ポイントの改善だった。」
そうなのか、とも思うのは、北海道高齢者向け住宅事業者連絡会を設立して会員を募ったのだが、12月現在で正会員(実際に高齢者向け住宅を運営しているところまたは研究者)が57社に比べ、賛助会員(住宅関連の事業者)が61社と上回っていることだ。つまり、建設資材や設備の生産、流通に関わる関連事業者が、ある意味の期待感(もしかしておつきあいしていた方がいいのかも程度の)を持って賛助会員になってくれているのだろうなあ、と思っている(賛助会員は年間1万円だから企業に取ってはさしたる負担でもない)。
しかも行政からすると、サービス付き高齢者向け住宅などが取り組んでいる要介護者のケアは、特別養護老人ホームや老人保健施設を開設するよりも負担が少ないので、ある意味ありがたい存在なのである。経済が活気づき介護保険負担が少ないとなればどんどん高齢者向け住宅を推奨したいところである。
ところが、近頃、地方自治体がサービス付き高齢者向け住宅の規制をしているという話を良く耳にする。高齢者住宅新聞の1月5日号に詳しいが、都道府県や市独自の登録基準を設けて、条件を厳しくしているというものである。
東京都だけが国の基準を緩めて「13平米以上あればよい」としているが、これはわかりやすい。東京都はこれから高齢者人口がどっと増えるところだが、地価が高いのでなかなか介護保険施設を整備できない。その分、民間の事業者によるサービス付き高齢者向け住宅に期待しているといえるだろう。東京都の民間頼みの傾向は、デイサービスのお泊まりサービスについていち早くその実態を認めてきたことからもわかるように、とにかく施設に頼らないサービスを工夫してほしいという本音がにじみ出ている。
その点、他の地方自治体は、サービス付き高齢者向け住宅ができると高齢者が集まりサービスも利用するから介護保険料が上がるというような深読みなのか、規制する自治体も多い。サービス付き高齢者向け住宅は基本的に住所地特例(注)がないので、確かにその様な危惧があることはわかるが、要するにその自治体における高齢者のニーズをどの程度満たしているかということが問われるのだろう。
転居は自由であり何ら規制すべきものではない。むしろ乱立する高齢者向け住宅の質を高めるようにすることが今、望まれているのではないか。
(注)サービス付き高齢者向け住宅でも、①賃貸借方式で特定施設入居者生活介護の指定を受けている住宅と、②利用権方式の有料老人ホームは住所地特例の対象となる。