先週の介護新聞に載せた、今年のケアマネ試験の感想を掲載します。
なお、合格ライン(点数)は当然ながら当方の予想ですので、外れてもご勘弁下さい。昨年のように一挙に5%も合格率を下げるなどのことがあるから、合格ラインは点数というよりもどこで足きりするかという判断にゆだねられますので‥‥
今年度の率直な感想は、全体的には昨年度よりは難易度が下がったような印象を受ける。まあ何点取っていようが合格ラインの線をどこに引くかということが問題で、昨年、合格率を一挙に5%も下げたのは政策的意図があったのかもしれない。今年も合格率は15%程度とみている。
総体的には難問は少なかったが、細かい知識が問われ、選択肢の表現が紛らわしい問題が多かった。また、新しいサービスである定期巡回随時対応型訪問介護看護の問題が2問(問題5、問題20)出題されたが、いずれも細かく難しい内容であった。問題22の介護予防支援計画の様式の内容を問う問題も、特に利用者基本情報の内容まで触れているのは細かすぎると感じた。しかし、定期巡回随時対応サービスも介護予防支援のアセスメントも、現役のケアマネジャーなら知っていなければならない事項ばかりである。過去3年ほど続いた相当過去の審議会の答申の知識が問われるよりはずっとましな問題であったと思う。介護支援分野の合格ラインは昨年同様(15点)か、若干上がると見る。
今年の保健医療分野は、昨年ほどは難しくはなかった。合格点は若干上がるだろう。福祉分野は訪問介護、訪問入浴介護、通所介護などに今年の改正の内容が出題されていて、昨年よりは若干難しい印象をもった。合格点は昨年同様程度ではないか。いずれも14点以上が合格ラインと見る。
介護支援分野は、総じて易問という印象を持った。問題1は、昨年に続き「高齢者を取り巻く状況の変化」から出題されたが、×の選択肢がわかりやすく易問。問題2「国の事務」を問う選択肢2に「要介護認定不服審査基準の設定」とあるが、これは面食らうだろうなあと思う。今までのパターンは都道府県とか市町村が実際に行っていてテキストに載っている業務を混ぜていたのだが、テキストにもない業務を選択肢に紛れさせるというやり方である。この手法は今回随所でみられた。ただし、正解の選択肢が揺るぎないので難問とはいえない。問題3は「保険者の会計」を問うという今までにはないジャンルだったが、「特別会計を設けなければならない」ことがわかっていれば易問。問題4「社会保険」は、「介護保険が地域保険であること」を把握していたら易問。社会保険の仕組みの基本的なことを問うている問題である。
問題5に定期巡回随時対応サービスの細かな問題が出題された。テキスト2巻には記載されているが難問といっていい。選択肢1「提供するサービスは、定期巡回サービス、随時対応サービス及び訪問看護サービスの3つである(×)」。ついそうだろうなあと思ってしまうが、実はもう一つ「随時訪問サービス」があり4つのサービスの提供となっている(随時対応サービスはオペレーターの対応を指す)。選択肢2「主治の医師が認めた居宅要介護者以外は、給付対象とならない(×)」は、訪問看護サービスを受ける利用者だけに当てはまることである。選択肢4「訪問看護サービスを行うのは、看護師に限られる(×)」は、その前の選択肢3にある理学療法士、作業療法士や言語聴覚士も可能である。
問題6「指定都市・中核都市以外の市町村の長が指定する事業者が提供するサービス」は、設問に戸惑う人もいたかもしれない。都道府県の指定するサービスが大都市特例により変更されたことが設問に記載されていた。これも単純に「都道府県」と記載しないで紛らわしくさせる意図がある。しかし問題は地域密着型の指定を聞いているわけで、〇×の選択肢は明確である。
問題7「介護保険上指定申請が必要無いサービス」は病院・診療所・薬局の見なし指定の問題で易問。問題8「介護保険施設の開設等」も問題の定番。老健だけが介護保険法に根拠がある。問題9「介護保険事業計画」も定番。居住関係の計画とは調和をとるという位置づけになったが一体のものではない。問題10「国保連」も定番、かつ易問。相変わらず支払基金と紛らわさせる問題もある。問題11「地域支援事業の包括的支援事業の内容」は任意事業などを把握していれば易問。問題12「介護サービス情報の公表制度」は、苦情が多く制度を大きく変えたので出題されないと思っていたが出た。しかし、都道府県の権限を市町村に置き換えているというわかりやすい×の選択肢が2問もあり易問。
問題13~15は要介護認定。例年より1問多かった。いずれも基本的な問題が多く、難問ではない。点数が稼ぎやすいところといえる。問題16~19はケアマネジメントと居宅介護支援、居宅介護支援事業所の業務。これらも基本的な問題が多く、難問ではない。ただ、問題18「居宅介護支援事業所が市町村に通知ないし報告しなければならない場合または事項」という設問もわかりづらいが、選択肢4の「居宅サービス計画に位置づけた法定代理受領サービスに関する情報を記載した文書(〇)」というのは問題としてはいかがなものか。たしかにテキストには「市町村(国保連に委託している場合は国保連)へ情報を記載した文書を提出」と書いているが、実際には国保連に委託していない市町村はないのだから無理があるなあと思うのだが。選択肢5「居宅介護支援台帳を作成した場合(×)」と間違われた受験者も多かったのではなかろうか。
問題20がまた定期巡回随時対応サービスの細かな問題。難問であるが、現役のケアマネなら知っておかねばならない問題であるので良問ともいえる。選択肢1「サービス提供の日時は、居宅サービス計画にかかわらず、当該事業所の計画作成責任者が決定できる(〇)」は、これが随時対応のウリである。ケアプランに位置づけられていない緊急サービスを行う必要があるからだが、以前、そうしたサービスはケアプランに位置づけられていないので認められないなどと実地指導でいじめられたことが懐かしくさえ感じる。選択肢2「計画作成担当者は介護支援専門員でなければならない(×)」の計画作成担当者は前述した4つのサービスの従事者のうち「看護師、介護福祉士、医師、保健師、准看護師、社会福祉士又は介護支援専門員から一人以上を選任しなければならない」こととなっている。テキスト2巻には「看護師、介護福祉士等」と表現されている。選択肢5「定額給付であるため、居宅サービス計画に盛り込んだ場合、他のサービスは保険給付とならない(×)」は、このサービスの見本ケアプランを見たことがある人にはわかると思うが、デイサービスなどを位置づけることは可能で、むしろそうした利用により定額給付が減るのでデイに行かせないような誘導があるのではないかと、危惧した指摘もあった。いろいろな意味でタイムリーな問題であったと思う。予想問題もこのくらい踏み込まねばならなかった、と率直に思った。
問題21~23は地域包括支援センターと介護予防支援の内容であった。
問題21の選択肢3の「地域包括支援センターは、施設サービス計画の検証を行う(〇)」はちょっと無理がある問題かなと感じた。根拠は「包括的・継続的ケアマネジメント支援業務」に求められるのであろう。ただ、×の選択肢がはっきりしているので迷っても正答にたどり着くとは思う。このような迷う選択肢が微妙にちりばめられていた。
問題24,25は事例であるが、いつも通りの易問。現実の事例は千差万別で正解というものがない。だからペーパーの事例は誰が見ても正解というものにしなければならないので、正答が見つけやすいということになる。逆に言うと事例問題を間違えるようでは介護支援専門員には向いていないと思った方が良い。
保健医療サービス分野については、医学的知識では、栄養、口腔ケア、薬剤管理、感染症、看取りなど介護支援専門員として必要な知識がちりばめられていた。認知症関連の問題が2題、終末期ケアが1題、また、今年から介護福祉士等が可能となった痰の吸引等の行為に関する問題も2題(痰の吸引、胃ろうなど)、そして新しい傾向で「医療と介護の連携」が出題されていて、改正後の介護保険サービスを意識した問題が多かった。サービスに関しては独立した問題は老健、訪問看護程度の出題であった。老健は加算問題が出て難易度は高い。訪問看護も新しい加算がでるなど難しかった。その他のサービスは複合化した問題の選択肢に盛り込まれていた。全体的に、地域包括ケアを目指すという考えが伝わってくる構成であったと思う。
福祉サービス分野については、ソーシャルワーク論4題はいつもながら易問。各サービスでは今年の改正の内容が反映されていて難しく感じたかもしれない。その他は生活保護、虐待、成年後見など予想された問題で、難易度は昨年より若干難しいという印象である。。点数を稼げるソーシャルワーク論があっただけに、保健医療分野に比べ合格基準は高くなるかもしれない。
めでたく合格し、実務研修を受けられる方は、今回の受験勉強に注ぎ込んだエネルギーを、今度は、現場のケアマネジメントに注ぎ込まれるよう期待したいものです。